┃解雇とは

解雇(かいこ)とは、事業または事業所に使用され、賃金を支払われる労働者が、労働契約(雇用契約)を解除され、現在の身分を失うことです。

┃日本における解雇とは

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効とされる(労働契約法第16条)。労働契約が満了した時や、自ら退職を申し出た時は解雇に該当しない。
自分から故意に解雇事由を作ったり解雇を依頼したりした場合は、雇用保険法では依頼退職か重責解雇に準じて取り扱うものとしている。したがって、会社側の都合により退職予定日より退職が早くなってしまった場合に解雇が成立し、退職予定日と解雇日が重なる場合は解雇とはいわない。(ただし、懲戒解雇はこの限りではない)
「解雇」の語は民間の事業所または事業者の被雇用者が失職させられることに用い、公務員が職を解かれることは解雇ではなく、「免職」という。
解雇を頭部・頚部を切断されて処刑されることに喩えて、「馘首(かくしゅ)する/される」と言い、俗にはより平易に「首を切る/切られる」「首にする/なる」「首が飛ぶ」と言い、「クビ」または「くび」とかな書きにされることも多い。また、マスコミ等では雇用契約に該当しない労務的契約の解除(芸能事務所からの契約解除等)も解雇と呼ぶこともある。ここでは雇用契約について述べる。

┃労働基準法の経緯

戦後、労働者の解雇について、民法による法的保護では十分ではないと考えられたため、新たに労働基準法によって最低基準を設けた
1.「解雇の自由」から「解雇の制限」へ
労働基準法には、解雇の要件(30日以上前に予告する、または同日数分以上の賃金を払う)が「労働者の責に帰すべき事由」があれば免除されるとあるため、これを解釈すると「30日分の賃金を払えば、特に理由が無くても解雇できる」となる。これは当初は解雇について一般的な見解であった。これに従って、「解雇の自由」を支持する判例が出されている。
しかし、1950年代に下級裁判所において判例を積み重ねた法体系ができあがっていく。この中で、裁判所は労働者に対し様々な法的保護を与えていき、この結果、「解雇の自由」は「解雇の制限」へと変わっていった。
2.「正当事由説」と「権利濫用説」
労働基準法第20条の解釈を巡って、裁判官の間にあった2つの説です・
□正当事由説
労働基準法20条の明文の要件とは別に、「解雇には正当な事由がなければならない」とする不文の要件があるとして、正当な事由のない解雇は無効とする説。
□権利濫用説
企業の解雇権は労働基準法20条によって認められているが、権利を濫用した場合には解雇を無効とするという説。濫用については、第2次世界大戦前にはすでに法体系として確立していたが、解雇に関しては適用外とされていた。戦後に入り、解雇も適用されるという考えが出てくる。

 

┃解雇の制限

民法において規定されている雇用契約(労働契約)は当事者の交渉力や社会的地位が同等であることを前提としており、期間の定めの無い雇用契約(これは一般的な雇用契約の形である)は当事者のどちらからでも一方的に解約を申し入れることができる。しかし現代社会においては使用者の方が労働者よりも強い立場にあるのが通常であるから、労働基準法などの労働法や判例法理によって全面的に修正されている。

 

┃解雇の予告

使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告をしなければならない。30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(労働基準法20条)。月給・年俸制等においては民法627条における解約予告期間が30日より長くなる場合であっても特別法である労働基準法の規定により、解雇予告義務は30日間に短縮されるという見解もあるが、労働基準法による規定はあくまで刑事責任の範囲であり、民事上は30日を超える予告義務が別に存在すると解することもできる。
予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合は短縮できる。予告手当を支払わず、労働者を即時解雇できるのは、次の事由により労働基準監督署長の認定を受けた場合である。
* 天災事変その他やむを得ない事由。
* 労働者の責に帰すべき事由(一般的には「懲戒解雇」事由に属するものに相当し、「普通解雇」には属さない。)
* 継続して勤務する意思がないにもかかわらず、予告手当、雇用保険の失業等給付を不正に受給する目的として故意に解雇事由を作った場合または作ろうとした場合。(詐欺罪の可能性あり)

解雇予告手当の趣旨は休業補償を目的としたものである。 3月31日付けでの退職届けを出していたけど、3月15日に解雇された場合は、16日分の手当ての支払いとなる。 14日後に再雇用の予定のある解雇は、16日分の支払いとなるが、解雇後に再雇用された場合であっても、退職日の時点で再雇用される見込みが無かった場合については同様に30日分の支払い義務が生ずる。
以下の労働者には適用されない(第21条)ただし以下の適用除外は解雇予告義務違反による刑事責任を免除されるだけであり、民事上の責任(民法627条、628条、労働契約法による中途解雇制限)をも免除されるわけではない。(日雇いは除く)
* 1ヶ月未満の日々雇い入れられる者。(民事上の予告義務もない)
* 2ヶ月以内の期間を定め使用されるものでその期間を超えない者。(民法628条及び労働契約法17条による中途解約の民事責任は残る)
* 季節業務に4ヶ月以内の期間を定め使用されるものでその期間を超えない者。(同上、民法628条)
* 14日以内の試用期間中の者。(ただしこの場合は労働基準法20条の解雇予告期間は免除されるが民法第627条の規定は生きているため、期間の定めのない雇用契約であれば民事上、使用者は2週間前に予告をしなければならない)

 

┃解雇予告手当

労働基準法第20条による支払いを解雇予告手当という。ここで言う「平均賃金」とは解雇予告日から遡って3か月分の平均賃金を指す。また「平均賃金」の内訳は基本手当、住宅手当、家族手当、資格手当、地域手当、技術手当、食事手当、年4回以上支給される賞与などを含めたうえでの平均で、年3回未満の賞与や残業手当、通勤手当は含まない。また、家賃補助を受けている場合、実際の家賃とその1/3の金額の方が労働者が実際に支払っている金額より大きい場合は、その差額を平均賃金の計算に含める。 尚、「解雇予告手当」は税制上では「退職所得」となるため、退職金が存在する場合は、それと合算して退職所得とする。

 

┃年次有給休暇との関係

解雇予告が行われると、最短で30日後に解雇となるため、30日を越える年次有給休暇を保持している場合は、解雇期日まで取得が可能となり、それ以降の分は法定最低付与分である場合は無効となり、法定以上の付与の分は買取が可能となる。ただし、解雇予告手当てが支払われる場合は、解雇期日を短縮されるため、年次有給休暇は無効となる日数が増える。解雇は退職と違い労働者の予期せぬことなのでよく、トラブルとなり法律での保護など、議論を呼んでいる。

┃解雇の種類

解雇という呼び名は単に普通解雇を指す場合と解雇全般を指す場合もあるが 解雇の種類は次の3つに分類される。
* 懲戒解雇;労働者が著しく重大な違反(例:犯罪行為、着服・横領、経歴詐称、業務執行妨害等)をした場合の懲罰として行なわれる解雇。解雇事由は就業規則に列記されたものであって、就業規則規定の手続きをとらなければならない。またほかの懲戒事例と釣り合い(平等取り扱いの原則)、社会通念上の相当性、事前弁明の機会の付与が適正手続きとして要求される。さらに、上記のような刑事犯罪等に該当しない場合には、事前の注意や警告、段階的懲戒も必要となる。
* 普通解雇;単に解雇と呼ぶ場合もあり、就業規則による解雇事由をもって行なわれる契約解除(解雇)。
* 整理解雇;普通解雇に属するものではあるが、過去の裁判の判例により現れてきた慣例であり、倒産などの回避を目的とするための人員整理として行なわれる解雇。尚、整理解雇の実施には裁判の判例で慣例となった「整理解雇の四要件」によらなければならない。

 

┃法律規定外の慣習

懲戒解雇の緩やかな制裁として法律上の用語ではない諭旨解雇(ゆしかいこ)が存在する。これは懲戒解雇に相当するが、本人が懲戒事実に関して深く反省しているのでこれを承諾するという意味であり、その上で使用者側の懲戒解雇を実施するに当たってのデメリットや労働者側の不利益の被り方を低くする処置として行なう解雇である。しかし解雇が自己都合退職より経済面で処遇がよくなることが多く制裁の意味をなさないため、諭旨解雇ではなく本人が自発的に行なう諭旨退職にすることが多い。なお、多くの企業においては諭旨解雇処分にした場合、一定期間経過しても本人が退職の申出を行わない場合、懲戒解雇にすることを就業規則で定めている場合も多い。実際にはシフト・出勤日数の調整による事実上の解雇や、労働者側の法的知識が無い事、訴訟費用が十分に無い事を理由に、会社側は不当解雇と分かりながら違法な即日解雇を行う事がしばしば見られる。また会社側から損害賠償等で社員を告訴する、家族を人質に取る旨を褒めのかす等、リストラ工作のために脅迫し自主退職に追い込むケースも多々見られるが、これらのケースでは、多くは労働者が告発した場合に企業が名誉毀損による告訴を盾に元社員の口封じを行う事が日常的に行われている。これらは労働監督署では証拠不十分として対応しない。労働者側は不当解雇にあわないよう、記録を日常的に取る習慣をつける事が肝要である。


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